サイケデリック・トリオ fugasi(フガシ)が、ファースト・アルバム『駄々』をリリース。池袋STUDIO Dedeの協力のもと制作された本作は、60年代サイケデリックロックを軸に、ブルースやアフリカン/中東由来のリズム感覚を取り込み、日本語ロックとして大胆に再構築された一枚だ。ジャケット写真は、パティ・スミスやイギー・ポップを撮影してきた西岡浩記が担当。ジャンルや時代を越境しながら、自分たちのロックを更新したfugasi。その現在地について話を聞いた。

Q. メンバー紹介をお願いします!fugasiの音楽のスタイルについても教えてください。
Vo & Gt 宮田岳(ex. 黒猫チェルシー / 頭脳警察 / Jagatara2020 他)
Dr & Perc はまち(花園distance / LOLOET 他)
Ba 栗原大(GLIM SPANKY サポート)
サイケデリック・ロックバンド。トリオ編成で都内を中心に活動中。
Q. まず、fugasiについて教えてください。いつ結成して、メンバーはどのように集まったのですか?
宮田岳:スタートしたのは2024年秋です。僕が集めた人たちなのですが、最初は僕のワンマンにはまちにゲスト的に出てもらって二人体制でスタートしました。ベースを入れようとなって、一緒に音を作りたいと思い浮かんだのが栗原君で声をかけ、2025年夏に3人になりました。
Q. 宮田さんは、ソロ活動やさまざまなバンド活動を続けてこられましたが、以前からご自身でバンドを始めようと思っていたんですか?
宮田:僕の活動を知ってくれている方はわかるかもしれませんが、ソロアルバム『ゆりかご』を作ったころ、先輩ミュージシャン達とのセッションを通じてジャズやアコースティックに傾いていきました。表現を模索してく中で、一昨年前に映画音楽を担当した頃から、同世代とロックバンドをやりたいという想いが強くなっていきました。
Q. はまちさん、栗原さんとは以前から交流があったのでしょうか。
宮田:一緒に演奏できる人を探していた中で、対バンで出会ったLOLOETのはまちの演奏を聴き、「あ、こいつは…」と直感的に感じて声をかけました。もともと知り合いではありませんでしたが、曲を渡してスタジオで合わせてみたときの手応えがよかった。
その後、半年ほど活動を続ける中で、ライブでしっかり届けていくためには「まずは音源を作らないと始まらない」と考えるようになりました。そんな中で池袋STUDIO Dedeが協力してくれることになり、一気に動き出したんです。当初は2人編成でやろうとしていたところ、「ベースは入れるべき」とはっきりと言われ、自分ではなく正式に迎えることに。さまざまな案を経て、自分の音楽人生を振り返ったとき、真っ先に思い浮かんだベーシストが栗原くん。オファーに「いいですよ」と応えてくれたことで、現在の編成が形になりました。
栗原:宮田くんとは10年くらい前に何度か現場で顔を合わせたことはありましたが、知り合いだったわけではありません。ただ、同世代のベーシストとしてどこか意識する存在ではありました。
宮田:実際にバンドに誘うとなると、同世代に素晴らしいベーシストはたくさんいる中で、「一緒に音を作りたい」と思ったのは彼でした。はまちも栗原くんも、僕が好きな音を鳴らせる人。その響きが純粋に好きだと思えたことが、バンドの出発点になっています。
Q. はまちさんと栗原さんは、実際にバンドで一緒に演奏してみてどう感じましたか?
はまち:今まで自分がやってきた音楽の感じとはまた違うので、楽しいです。
栗原大:僕はGLIM SPANKYのサポートの活動だけだったので、バンド活動は一種の懐かしさというか、楽しいですね。音楽性に関しては、ロックは馴染んでるので自然にそのままやれる感じです。

Q. 3月18日発売の1st Album『駄々』について教えてください。fugasiにとって、このアルバムはどんな作品になりましたか?
宮田岳:これまで自分がリーダーとして責任をもって、同世代のメンバーと作品を作る経験はなかったのですが、ずっとアルバムを作りたいという思いはありました。 今回の制作は、名前も実績もない僕らのような奴らを、一流のプロのスタジオでやらせてほしいとお願いするところから始まっていて、周囲の方々の人情や期待に支えられてスタートしたんです。
制作期間中は、その期待に応えたいという気持ちをずっと持ち続けながら、毎日曲と向き合い続けました。本当にベストを尽くしました。ロックが好きな人や、アートに興味がある人には、きっと響く作品になったという手応えがあります。
はまち:私は宮田さんが出してくるアプローチとかが自分の中になかったものがあって、それも結構良かったなって思います。
栗原大:僕は入ったばっかりで、自分に何が出来るんだろう、みたいなのをずっとやっていたような感じでしたね。
Q. このアルバム全体を通してのコンセプトやテーマはありますか?
宮田岳:寄り添ってくれるような優しさや、泣ける音楽が世の中に沢山ありますが、自分はぶっ飛んだ刺激があるものに惹かれてきました。
社会でいろんな大変な状況がある今、説教くさいものとか、優しくしてくれる音楽というよりも、そういう純粋な好奇心に刺さるものを作りたかった。非日常を面白がれる人に、ちゃんと届く作品にしたいと思いました。

Q. 1stアルバム『駄々』の中で、それぞれ特に思い入れのある曲はどれですか?理由も教えてください。
栗原大:特に1曲を決めるっていうのはちょっと難しいのですが、最後の『ジ・エンド』って曲で、大声を出さされました。僕は基本声が小さいんですけど……子どもの時ぐらいしか出したことないくらいの声を叫ばされました(笑)
はまち:私も『ジ・エンド』が好きです。最初のギターの感じも好きだし、栗原さんの朗読の声がいい感じで、終わり方も好きです。
宮田岳:僕も『ジ・エンド』(笑)あの曲はあらかじめ3人で録るのをイメージして作った唯一の曲なので、それぞれの良さが自然と映えてる。あと、アルバム全体の曲の中で一番言いたいことが伝えられたなと思ってます。僕は普段の曲づくりでは、感覚的に湧きあがってきたものだけで作るタイプなのですが、『ジ・エンド』では構成や歌詞にじっくり向き合い、頭も使いました。初めてそれがうまくいって自分の中でもひとつ自信につながった楽曲です。みんな同じ曲だった(笑)プロモーションにならない…(笑)
Q. 1st Album『駄々』、 どんな人に聴いてほしいですか?
宮田岳:美大生全員に聴いてほしいです。創作をする人にはきっと響くと思っています。美大生全員集めたら日本中で100万人くらいいると思うので、武道館埋めれますよね。
fugasi – ブランコ・ザッパ (Official Music Video)
Q. Music Video『ブランコ・ザッパ』はとてもかっこよかったですが、撮影時のエピソードを聞かせてください。
宮田岳:あのヴィンテージカーを持ってる方がMVのために貸してくれたのですが、あの日、3台の車を運搬するために僕は48時間起きてたんです。二度と戻りたくない……しかも大晦日だったんです(笑)基本的に、僕は目が血走ってると思います(笑) 栗原くんの仮面は傑作だったね。
栗原大:あれは視界が全くないんです。小さい光が点で見えるだけで自分がどこを向いてるか分からない状態で、みんなに身体を動かしてもらいました。見えない状態で撮影用のドローンが落ちたのですが、自分の上に落ちなくてよかったなという怖い思いはしました。
はまち:透明に色をつけた仮面をつけていたのですが、宮田さんが鼻のところに穴を開けてくれたりしたんですが、呼吸ができなさすぎて必死でした(笑)

Q. fugasiの皆さんは、最近どんな音楽を聞いてますか?
宮田岳:僕はベースに比べてギターを弾き出してまだ浅いのでギター研究中です。フォルクローレ(南米の)ギタリストを聴いてます。
はまち:自分もギタリストなんですけど、最近小さいノイズギターを買って弾いてるのですが、デレク・ベイリーを聴いてます。
栗原大:日本だと岡田拓郎さん。海外だとジュリアン・ラージをよく聴いてます。僕もギタリストですね。
Q. これまでの音楽人生の中で最も影響(刺激)を受けたアーティスト or 曲を教えてください。
宮田岳:今回だと、キャプテン・ビーフハートの『トラウト・マスク・レプリカ』というアルバムを1年半聴き続けて、今回のアルバムが出来たといっても過言ではないです。これは麻薬なので聴かないほうがいいです(笑)
栗原大:難しいのですが、分かりやすいところで言うと、ジミ・ヘンドリックスです。
はまち:音楽を聴いて最初にすごいなと思ったのが、武満徹さんの作品『そして、それが風であることを知った』を聴いたときに、「こんなに美しい曲があるんや」って感動して、影響を受けていると思います。
Q. 最近で一番心に残っているライブ体験はありますか?
宮田岳:ウルグアイのピアニスト、ウーゴ・ファトルーソさんのピアノです。(僕が一緒に活動もしている、ヤヒロトモヒロさんとウーゴのデュオ“Dos Orientales”のライブでした)
はまち:別のユニットでHUGENをやってるんですが、HUGENの企画で、踊ってばかりの国の下津光史さんが出ておられたのですが、自然と涙が出てくる体験をしました。
栗原大:つい最近BLUE NOTEに観に行った、ピノ・パラディーノ&ブレイク・ミルズのライブです。即興的な要素が多い印象で、刺激的でした。
Q. お気に入りの映画・ドラマがあれば教えてください。
宮田岳:映画を全然観ないのですが、最近『落下の王国』デジタルリマスターを観て、面白かったです。あれで、アルバムの『ジ・エンド』が完成に持っていけました。
はまち:私も映画をあまり観ないのですが、映画を観たことないけどサントラが好きな作品があって。黒澤明監督の『どですかでん』の楽曲を武満徹が作っていて、それが好きです。
栗原大:僕もほぼ映画・ドラマ観ないんですけど…無理やり挙げればディビット・リンチの『イレイザーヘッド』。笑えて面白かったです。
Q. 創作活動に欠かせないアイテムや機材、”これがないと始まらない”というものは?
宮田岳:酒
はまち:酒、石ころ、松ぼっくり
栗原大:特になし

Q. それぞれ、メンバーの他の2人に対して好きなところを教えてください。
宮田:僕から見た栗原くんは、僕はベーシスト的な目線で見てるんですけど──自分が本当にやりたいことをやれる人。そこが僕にとって憧れの部分。例えば、プレイスタイルとか、その髪型(笑)ずっと思ってたんですけど、僕はすぐ横道にそれちゃうタイプで、だからそれをまっすぐやれる人がすごいんです。まっすぐじゃないかもしれないけど、僕にはできなかった。フェンダーのプレシジョンベース──あの最高の音がするベースも、僕にはちょっとコンプレックスがあったんです。そういうのを思い切りできる人っていうのが、本当に憧れですね。
はまちに関してはもう宇宙です。僕の期待をいい意味で裏切ってくれたら。それを期待してます。
栗原:そうですね。ふたりとも性質は違うんですけど、どこかゆるさを持っているんです。そのゆるさのタイミングや表現はそれぞれ違うけど、それがすごくいいなと思ってます。確かにはまちは宇宙みたいな存在で、計り知れないゆるさみたいなものがいいですね。
宮田くんは、こだわるところは徹底的にこだわるけど、こだわらないところは本当にどうでもいい人で、そこがすごくいいですね。「お酒は安けりゃいい」みたいな彼のスタンス……これはまあ半分冗談で、ベーシストとして単純に尊敬してます。10年くらい前に黒猫チェルシーと対バンしたときに宮田くんを見ました。そのとき、すぐに良いベーシストだと思いました。具体的な演奏内容はさすがに覚えてませんが、直感的に良いと思ったことはずっと覚えています。それから後になって大物たちのバンドに参加しているのを知って、やっぱりそうだよね、と。だからfugasiで僕がベースを弾いていても、困ったときは頼ればいいという安心感があります。それがすごく頼もしいですね。
はまちは、僕が入る前のイベントで二人だけで演奏しているのを聴いたときも衝撃を受けました。はまちの演奏は、いまだにその録音を聴いてたりするんですけど……いい意味で考えていないというか、「こう見せたい」とか「こう見られたい」みたいなもののいやらしさを全く感じない。音楽がその場にあって、それに対して自然に反応して、言語や余計な思考を介さずにそのまま表現しているような。それが、音楽をやる人間として格好いいし、それができる人って意外と稀有なのかなと感じます。はまち本人がそういう人間性なんだろうなと、それが素敵だと思っています。
はまち:私は、二人ともすごく優しいなと思っています。
栗原さんは、一緒に演奏しているとき、ベースプレイで自然に導いてくれる感じがあります。自分のスタイルをしっかり持っているのに、同時にみんなに寄り添ってバランスを作ってくれるところが本当に好きです。一緒に演奏していても気持ちよくて、ありがたい存在ですね。
宮田さんは、周りにすごくたくさん協力者がいるのが印象的です。いろんな人が自然と協力したくなる、その気持ちがわかるくらい、やっぱりすごい人です。周りへのリスペクトもあって、音楽も納得がいくまで突き詰める姿勢が本当にすごいなと思っています。
Q. これからfugasiの音楽に出会う方に向けて、メッセージをお願いします!
宮田:このアルバムを聴いて、もし一曲でも、何かのメディアでも、ふと心に引っかかるものに出会ったなら──「何だこれは…?」と感じたなら、それは正しい。もしかするとまだ分からないけど、面白いかもしれない。そう思えたなら、それはもう間違いなく面白いんです。大事なのは、自分の直感を信じること。僕が保証します。ツアーも始まるので、是非来てください。
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Photography by 西岡浩記
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“fugasi『駄々 (1st album) debut tour』” と題した全国ツアーの開催も決定。ぜひチェックして🎸
5月2日(金)渋川 Casa Midori(群馬)
5月3日(土)ギャラリー花蔵(長野)
5月4日(日)神戸 PUB CHELSEA(兵庫)
5月5日(月・祝)名古屋 Ceder’s(愛知)
5月23日(土)所沢 音楽喫茶MOJO(埼玉)
5月24日(日)つくば aNTENA(茨城)
各地ワンマン公演を予定しており、なお、5月23日 所沢公演には Billie Jean & the DEATH RABBITS が共演、5月24日 つくば公演にもゲストアクトの出演が予定されている。
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fugasi (フガシ)
2024 年秋に宮⽥岳(ex. ⿊猫チェルシー / 頭脳警察 / Jagatara2020 他)の呼びかけで結成。
はまち(花園distance / LOLOET 他)と共に始動し、2025 年夏には栗原⼤(GLIM SPANKY サポート)を迎え、トリオ編成となり、都内を中⼼に活動中。
2026年、池袋 STUDIO Dede協⼒のもと、1st アルバムを制作。fugasi が描くのは、破壊と再⽣が織りなす⾳の花、アジア⼈発のサイケデリックロック。