ヒップホップ、ジャズ、アンビエント、ロック——どんなジャンルの言葉を並べても、NEWLYの音楽を一つに括ることはできない。作曲家、トラックメーカー、ベーシスト。そのどれもが正解であり、同時にどれか一つでもない。肩書よりも、「今、自分が鳴らしたい音」に素直であり続ける音楽家、NEWLYにインタビュー。

あなたの制作活動を、まだ作品を聴いたことがない人に向けて教えてください。

作曲をしています。作詞もするし、音楽全般なんでも作ったり、演奏したりします。自分のライブでは、友達のミュージシャンたちと一緒にバンドセットで演奏しています。

NEWLYさんが、音楽を始めたきっかけは?

なぜ始めたかはあまり覚えていないですが、小学4年生の頃から、ご自宅を教室にして個人レッスンをされていたジャズギタリストの先生に教わっていました。ある程度弾けるようになって、中学⽣になる頃には⾃然と曲を作り始め、⾼校生になってからはまた同じ先⽣に教わってジャズを学びました。

影響を受けた/大好きなミュージシャン、アーティストはいますか?

いろんな⼈から影響は受けていると思います。親しい方で、⼈としても⾳楽家としても成長させてもらったのは、⻑岡亮介さんとBASIさんです。
⾳楽の色んな面を、⼈間性も含めて教えてもらっています。



NEWLYさんの作品には、Hip HopやJAZZ、アンビエントなどさまざまな音楽の要素が自然に溶け込んでいます。ご自身の音楽性を形作った原体験やルーツについて教えてください。

原体験は、ギター教室の先生かもしれません。先生は、ハードオフで買った何千円のギターを、自分で改造してすごく大事に使っていたんです。高価な楽器じゃなくても、本当に格好良かった。その姿から「なんでもいい。でも、なんでもいいわけじゃない」という感覚を教わった気がします。

強いこだわりはある。でも、「物を選んだり、これじゃなきゃ絶対ダメ」という考え方ではない。その感覚は、今でも制作の根っこにあります。


「これがいい」と思える音を信じて

最新作『Sphere』を聴いていると、これまでのサウンドアプローチに加えて、より空間や余白、アンサンブルの響きを意識した作品にも感じました。この作品を制作していた時期、どのようなことを考え、どんな景色を思い描いていましたか?

ありがとうございます。前作『Not About All』を出したあとから、本当に信頼できる同世代の友達と出会えたり、「これだけは自分を信じたい」という気持ちが少しずつ芽生えてきたんです。だから今回は、「こうじゃなきゃいけない」という制限がほとんどなくなりました。アイデアが浮かんだら、そのまま出す。「これでいい」じゃなくて、「これがいい」と思える感覚で作っていた気がします。

『Sphere』はどのようなきっかけから生まれた作品だったのでしょうか?


この曲は、僕の10代の頃から仲のいい友達、You2というアーティストの作品のために作りました。

彼は履きつぶされたスニーカーを分解して作品を制作していて。減ったソールには、その⼈が歩いてきた時間や経験が刻まれていて、それぞれの⼈⽣が映し出されているような気がするんですよね。

ある時、彼から『Sphere』という作品を作ると聞いて、「この作品に⾳を贈りたい」と思い、プレゼントとしてこの曲を書きました。展⽰で何度か流したあと、「もっと気軽に聴いてもらえたら」と思ってリリースした作品です。

民族音楽のような響きも印象的でした。

あの曲を考えていた時は、カンボジアにいたんです。ベトナムから陸路で向かうバスの中で、「もしこの球体を信仰する⺠族がいたら」という想像をしていました。帰国してから最初に浮かんだベースラインが、そのまま曲作りの始まりになっています。



今の暮らしについても聞かせてください。音楽仲間と共同生活をされていますが、実際に生活してみていかがですか?

めちゃくちゃ楽しいです。音楽家のyuya saitoと音楽ライターのRenya John Abeと暮らしています。⼀緒に暮らしているみんなを⾒ていると、⼈間性って本当にそのまま⾳楽になるんだなと実感します。

例えば、yuyaが冷蔵庫の残り物でサラッと料理を作って「よかったら食べて」って言ってくれる。それがすごく美味しくて、「この⼈らしいな」と。

その可愛らしさやアイデアの豊かさって、演奏にもそのまま表れているかもしれない。朝、「おはよう」って⾔う時の声のトーンとか、⾳楽とつながっている気がする。最近は、「⽣活そのものしかないんだな」という感覚が強くなりました。

最近気になっているニュースや社会的なテーマはありますか?

⾳楽は、誰かの逃げ道でもありたいから、発⾔は控えます。でも、カンボジアに⾏ったときに、彼らの歴史を知ってから、ニュースの⾒え⽅は変わりました。遠い出来事じゃなくて、ちゃんと現実として感じるようになった。

だから、⾃分がこの時代に⾳楽を作る意味は考えています。2000年⽣まれで、⽇本⼈で、インターネットが当たり前にあって……3⽇ご飯が⾷べられなかったことは⼈⽣で1度もない。家族に⾳楽家もいない中で、いわゆる”ルーツ”らしいルーツがないこと⾃体が、”私らしさ”なのかもしれない。だからこそ、個人的な⾃分のフィルターを通して音楽を作りたい。

⾳楽の歴史や系譜の中で、「俺はどんな⾳を鳴らすのか」、毎⽇のように考えています。

最後に、luteの読者へメッセージをお願いします。また、これからNEWLYさんの音楽に触れる方に最初に聴いてほしい作品があれば教えてください。

⾃分もこれからもっと⾃分を信じて生きたい。だからみんなにも、健やかに、⾃分の感じるままに、そっと⾃分の感覚を守っていてほしいです。

ファーストアルバム『Not About All』を聴いてみたら、きっと楽しい。
曲はたくさん作っているから、またすぐ会いましょう。


Photography by @matumotoph 📷
Interview & Text by Saori @saori8