グラミー賞受賞のR&Bシンガー、ディアンジェロ(D’Angelo、本名マイケル・ユージーン・アーチャー)が逝去した。享年51歳。家族によると、長年のがん闘病の末、火曜日に亡くなったという。声明では「家族にとって輝く星であり、私たちにとってこの世での光を失った。彼が残した感動的な音楽の遺産に、永遠に感謝している」とつづった。

ディアンジェロは、ヒップホップのグリット、力強いソウル、ゴスペルに根ざした感情を融合させた音楽で、1990年代のネオソウルムーブメントを牽引した。今春には彼の地元ヴァージニア州で、デビューアルバム『Brown Sugar』の30周年を祝った。プラチナセールスを記録したこのアルバムは、「Lady」やタイトル曲などのヒットを生み、1995年のリリースでグラミー賞にも複数ノミネートされ、R&B界における独自の新星としての地位を確立した。
彼の官能的なボーカルスタイルは、ハスキーな質感と教会音楽で培った流麗さの融合で、同世代のアーティストとは一線を画していた。この声は、2000年リリースのシングル「Untitled(How Does It Feel)」の印象的なミュージックビデオと切り離せない。ミニマルで上半身裸の映像は文化的な象徴となり、芸術性、セクシュアリティ、黒人男性表現の脆さについて議論を巻き起こした。この曲は男性R&Bボーカルパフォーマンス賞のグラミーを受賞し、2作目のアルバム『Voodoo』はビルボード200で1位を獲得、最優秀R&Bアルバム賞も受賞した。

プリンスにも通じる独特の精神性を持つディアンジェロは、常に音楽そのものに献身し、商業的仕組みからは距離を置いていた。2000年のAP通信のインタビューで、商業主義を追うことの代償について率直に語っている。
「(ミュージシャンたちは)“売れるもの”“商業的に通用するもの”という考え方の罠にとらわれてしまっている。それは芸術を壊すし、本来の本質を壊す。本質はそんなやり方で音楽を作ることではない。」
同年、名声の中で孤独を求める自分についても語った。
「以前はよく出かけていたけれど、今はより隠遁者になった。平和と静けさを求めている。」

自身の作品に加え、コラボレーションでも才能を発揮。ローリン・ヒルの名盤『The Miseducation of Lauryn Hill』(1998)のバラード「Nothing Even Matters」で印象的なデュエットを披露したほか、The Rootsのアルバム『Illadelph Halflife』(1996)や、映画『Jason’s Lyric』(1994)のために結成されたスーパーグループBlack Men Unitedの楽曲「U Will Know」を作曲・共同プロデュースした。
ジェイミー・フォックスはSNSで「初めて彼の音楽を聴いたとき、自分はこう思った。『この人は特別だ』と。ライブで初めて会ったときも、圧倒された。声は絹のように滑らかで完璧だった」と振り返った。
1990年代には、グラミー候補のR&Bシンガー、アンジー・ストーンとも深く関わり、共に『Brown Sugar』を制作。ストーンはディアンジェロを「音楽のソウルメイト」と呼び、共に作った楽曲「Everyday」は彼女のデビューアルバム『Black Diamond』(1999)に収録された。二人の間には息子、スウェイヴォ・トウェイン(マイケル・アーチャーJr.)がいる。ストーンは今年、交通事故で亡くなった(享年63)。ディアンジェロには娘のイマニ・アーチャーもいる。
『Voodoo』後、ディアンジェロは10年以上公の場から姿を消し、私生活や創作の葛藤が噂された。2014年、待望の復帰作『Black Messiah』を発表。全米での抗議運動やブラック・ライヴズ・マター運動の中でリリースされ、政治的かつ緊迫感のある作品は、再びグラミーを獲得し、世代を代表する声としての地位を確立した。シングル「Really Love」もグラミーを受賞し、レコード・オブ・ザ・イヤーにもノミネートされた。
今年5月、D’Angeloは健康上の理由で2025年のRoots Picnicのヘッドライナー出演を辞退した。
代表曲に加え、「Me and Those Dreamin’ Eyes of Mine」「Cruisin’」「Devil’s Pie」などの人気曲も多く、彼の影響はチャートを超えて広がり、マックスウェル、アリシア・キーズ、フランク・オーシャンなど多くのアーティストにインスピレーションを与えた。

以下は、D’Angeloの訃報に対する著名人たちの追悼コメント:
Jamie Foxx(ジェイミー・フォックス)
「初めて君の音楽を聴いたとき、心の中でこう思ったんだ。“なんてこった、この人は神に祝福された存在だ……”って。そしてついに君を見る機会が訪れた。みんなが“あの時代で最も衝撃的なミュージックビデオ”を見たときのように、僕も完全に打ちのめされた。
『この人のライブを絶対に見なきゃ』と思って、ハウス・オブ・ブルースに行った。君はステージに出て、すぐに音で世界を変えた。その声はシルクのように滑らかで、完璧だった。君のスタイルと存在感を、僕は心から羨ましく思った。
だから今、涙が止まらない。神が“特別な創造物”のひとりを天へ連れて行ったと聞いて……。神は間違いを犯さないとわかっているけど、これは本当に、心が張り裂けるほどつらい。やすらかに眠れ、友よ。君は永遠に恋しく思われるだろう。でも君の音楽と足跡は、世代を超えて生き続ける。 REST IN POWER(力と音楽の中で眠れ)。君は唯一無二だ」
— Instagramより
Miguel(ミゲル)
「“ディアンジェロになりたくなかった奴なんている?”って感じだよ。つまり、僕らの中で“ディアンジェロみたいになりたくない”と思った人なんていない。彼の選択、音楽性、ソングライティング、感情のこもった表現——全部がすごかった。
彼のサウンドは、どこからともなく現れたようでいて、同時にどこか懐かしい感じがした。そんなアーティストは本当に稀だ。彼は“唯一無二”の存在だった。51歳はあまりにも早すぎる。次の作品を楽しみにしていたのに。
『Black Messiah』——あの作品の緻密さ、職人技、音への献身はすごい。録音の前に何ヶ月もリハーサルを重ねていたと聞いた。彼のアルバムはどれも、僕にとって“クラシック”なんだ」
— R&Bシンガーのミゲル(AP通信インタビューにて)
Maxwell(マクスウェル)
「君がいてくれたから、僕らがいる」
— Instagramより
Jill Scott(ジル・スコット)
「ずっと前に言ったでしょ——“すべてを理解できるわけじゃないし、すべてを理解する必要もない”って。私はディアンジェロに会ったことはないけれど、彼を愛し、尊敬し、その才能を心から敬っていた。この喪失は、本当に痛い!!彼を家族のように思う人たちに愛を送ります。I’m so sorry. R.I.P. GENIUS.」
— X(旧Twitter)より
Kelly Rowland(ケリー・ローランド)
「これは本当に深く、深く痛い。この人が音楽にすべてを注いだ、その姿を思い出すたび胸が締めつけられる。彼の創作プロセスがどれだけ天才的だったか、聞くたびに言葉を失ってしまう……。彼は本当に“唯一無二”だった。この喪失に打ちのめされている。神がディアンジェロの家族と愛する人たちを祝福しますように。私たちはひとりの“巨人”を失った」
— Instagramより(歌手/俳優・元デスティニーズ・チャイルド)
Flea/Red Hot Chili Peppers(フリー)
「僕が何度も何度も聴き返した、大好きなアーティストのひとりだ。この30年間で、彼以上にファンキーなことをやった人はいない。会ったことはなかったけれど、彼の音楽の前では自然と頭を垂れてしまう。なんて美しい声、そして真似できない作曲スタイルだろう。彼はポピュラー音楽の流れを変えたんだ。天使たちとともに自由に飛んでくれ、ディアンジェロ。僕らは永遠に君を聴き続け、心を揺さぶられ続けるだろう。膝をつき、祈る」
— Instagramより(レッチリ共同創設者・ベーシスト)
Tyler, the Creator(タイラー・ザ・クリエイター)
「俺の9歳の誕生日、2000年3月6日。サウスベイ・ギャレリアのSam Goodyにいた。誕生日でもらった20ドルを握りしめて、『Voodoo』を買うって決めてたんだ。
どうしてこんなに“シンプルで、個人的で、広がりがあって、天才的”な曲が書けるんだ?そう思った。彼は本当に特別な人——サヴァン、真の異星人みたいな存在だった。
あのとき『Voodoo』を手に入れられたことは、今でも幸運だと思う。彼の芸術を生きて体験できた俺たちは、ラッキーだ。俺の音楽的DNAは、彼によって形づくられた。永遠に感謝してる。安らかに旅立ってくれ」
— Instagramより
Jennifer Hudson(ジェニファー・ハドソン)
「本当に痛い。今日は“真のオリジナル”を失った。信じられない。現実じゃないみたい。ディアンジェロ、あなたの声は永遠に生き続ける。ゆっくり休んで、キング」
— Instagramより
Nile Rodgers(ナイル・ロジャース)
「友人のゲイリー・ハリスが、ディアンジェロというミュージシャンを僕のニューヨークのアパートに連れてきたことを覚えている。彼は、自分が持ってきた音楽をどうすればいいのか迷っていた。僕はすべての曲を聴いた——敬意のためだけじゃない、それが本当に素晴らしかったからだ。最後に彼が“これをどうすればいい?”と聞いてきた。僕は昨日のことのように覚えている。“そのまま出せ。完璧だよ”と答えた。でも彼はアーティストだから、もっと良くする方法を探したいと思ったんだろう。約1年後、その曲のひとつがラジオから流れてきた。それは天才的で、まさにあの日聴かせてくれた音と同じだった。今でもそのオリジナルのカセットを持っている」
— Xより(Chic共同創設者・伝説的プロデューサー)
Bootsy Collins(ブーツィー・コリンズ)
「なんてことだ……信じたくない。俺たちは友人であり、クリエイターであり、レジェンドを失った。ディアンジェロ、家族や仲間に祈りを捧げる。みんな君を愛してる、リトル・ブラザー。R.I.P……」
— Xより(ベーシスト/Parliament-Funkadelic)
Doja Cat(ドージャ・キャット)
「安らかに眠ってください、ディアンジェロ。ご家族と友人たちに、愛と祈りを送ります。あなたは魂の声であり、私たちの世代、そして未来のアーティストたちに計り知れない影響を与えた人です」
— Xより
Rosie Perez(ロージー・ペレス)
「なんて悲しいの……。彼が闘病していたのは知っていたけれど、それでもこれはつらい。素晴らしいアーティストが、あまりにも早く去ってしまった。ご家族と愛する人たちにお悔やみを。#RIP D’Angelo」
— Xより
DJ Premier(DJプレミア)
「ディアンジェロの訃報、本当に悲しい。一緒に過ごした素晴らしい時間がたくさんある。本当に寂しくなる。安らかに眠ってくれ、D。愛してる、キング」
— Xより(伝説的ヒップホッププロデューサー)
Bartees Strange(バーティーズ・ストレンジ)
「プリンス以外に、これほど敬愛していたミュージシャンはいない。彼は最高のプレイヤーであり、バンドリーダーだった。そして彼自身も苦しんでいた——それをみんな知っていた。こういうアーティストには滅多に出会えない。彼は僕の人生に深く触れた。いつかライブを観られると思っていたのに。こんなに若く亡くなるなんて信じられない。本当に悲しい。彼が過去を経て新しい自分に成長していたことを、僕は愛している」
— Instagramより(インディーミュージシャン)
9th Wonder(9thワンダー)
「空港で泣いてる。この世代で最も偉大なソウル・ミュージシャンが逝ってしまった。マイケル・アーチャー(ディアンジェロ)、愛してるよ……。偉大なる者に永遠の力を。ディアンジェロ、安らかに。僕は打ちひしがれている」
— Instagramより(プロデューサー)
Bryan Michael Cox(ブライアン・マイケル・コックス)
「今日は“巨人”を失った。最後にアーティストの死で涙を流したのはプリンスのときだった…。そして今日、また涙が出た。永遠の力の中で眠れ、マイケル・ディアンジェロ・アーチャー」
— Instagramより(R&Bソングライター)
By JONATHAN LANDRUM Jr. AP Entertainment Writer
and The Associated Press