ロンドンを拠点に活動するR&Bシンガー、Amiide。日本で音楽活動をスタートし、ダンスミュージックデュオやヒップホップトリオでの活動を経て、現在はソロアーティストとして楽曲制作を行っている。
10月28日にはミニアルバム『Conversations』をリリース予定。2000年代R&Bや宇多田ヒカルから受けた影響を自身のルーツとして大切にしながらも、過去の音楽をなぞるのではなく、今のAmiideだからこそ生み出せるサウンドと表現を追求している。
ロンドンに拠点を移して約4年。BBC 1Xtraで楽曲『Moving On』が“Track of the Week”に選出されるなど、その音楽は現地でも着実に注目を集めている。日本とロンドン、それぞれの場所で音楽を届けるなかで感じたこと、ミニアルバムに込めた思いについて話を聞いた。

ロンドンに移住されて、今の生活はいかがですか?
好きだなと思います。街中で流れている音楽も自分の好きな感じの音楽だったり。特にUKのR&Bが好きなので、好きなアーティストのライブをさくっとすぐに観に行けるのもいいですね。
もともと音楽に囲まれた環境で育ったそうですが、ご自身で音楽を作り始めたのは?
母親がオペラ歌手だったので、子どもの頃からずっと音楽に囲まれていました。自分で曲を作り始めたのは25歳くらい。日本に戻ってきてから音楽活動を始めました。最初はダンスミュージックのデュオ、その後ヒップホップトリオで活動して、そこからソロになりました。
Amiideさんは、音楽的にはどんなアーティストから影響を受けていますか?
宇多田ヒカルさん。特に『First Love』は、自分の音楽にかなり影響を与えていると思います。2000年代のR&Bもずっと好きです。
2000年代R&Bの影響を、現在の音楽に落とし込むうえで特に意識していることはありますか?
最近は、昔の曲のようなサウンドのThrowbackが流行っているじゃないですか。2000年代の音をそのまま再現したようなものも新しいものとして今出ていたりして。個人的にはそのままのものには、あまり惹かれなくて、自分が影響を受けていることは大事だけど、コピーはしたくない。ドラムの音や楽器の音まで当時のものに似せてしまうのではなく、あくまでインスピレーションとして取り入れて、その中で自分らしい要素を加えて、新しいものを作りたいと思っています。
Amiideさんは、現在はソングライティングだけでなく、プロデュースやミックス、マスタリングまでご自身で手がけていますね。ずっとその制作スタイルなんですか?
そこまで自分でやるようになったのは、ここ2〜3年くらいです。以前はデモトラックを作って歌を乗せて、それをプロデューサーにアレンジしてもらうスタイルでした。自分の中に「プロデュースって難しいもの」という固定観念があったんです。
でも、ソロになってから少しずつ自分でもプロデュースするようになって。最近やっと「自分でプロデュースしてもいいんじゃないか」と思いはじめて。今月末にリリースするミニアルバムにも、他のプロデューサーにお願いした曲と、自分でプロデュースした曲の両方が入っています。

10月28日にリリースされるミニアルバム『Conversations』は、Amiideさんにとってどんな作品になりましたか?
EPはこれまでも作ってきたんですが、アルバムのようにコンセプトをある程度統一させて一つの作品としてまとめるのは初めてだったので、思っていた以上に時間がかかりました。
曲を作っても、「これは作品には合わないな」と思って入れなかった曲もあります。いろいろ考えながら作っていって、最終的には自分なりに一つの作品としてまとまったかなと思っています。
作品全体には、恋愛の時間の流れも描かれているそうですね。どんなところからインスピレーションを受けたのでしょうか?
そうですね。曲順も、自分のなかでの恋愛の成長を描いています。最初に失恋があって、そこからムーブオンして新しい出会いがあって。関係が長くなれば、もちろんいろいろな問題も起きる。そういう流れを一つの作品の中で描けたかなと思っています。
『Conversations』は、『Before Sunrise』『Before Sunset』『Before Midnight』(1995年の3部作のアメリカ映画)から大きなインスピレーションを受けて作りました。このシリーズは、出会い、再会、そして結婚生活へと、2人の関係が変化していく様子を描いた作品で、会話を中心に物語が進んでいくのが本当に面白いのでぜひ観てほしいです。
今回のアルバムタイトルの『Conversations』にも、「人と人との会話って大切だよね」というメッセージがあります。
普段のご自身の楽曲制作はどのように進めているんですか?
時によりけりですが、歌詞を書くのに時間がかかるタイプなので、トラックを聴きながら、その音が何を言いたいのかを自分の中に落とし込んでいったり。なかなか言葉が出てこないときは、映画を観て、そのストーリーを歌にすることもありますね。
⾳楽活動以外で好きなこと、ハマってることはありますか?
Apple TV『Ted Lasso』
Nintendo Switch 2のホグワーツ・レガシー
コラボしたいアーティストはいますか?
宇多田ヒカルさん
制作活動に欠かせないアイテムや機材があれば教えてください。
Neumann(ノイマン)のマイク:TLM103
ここ何年もレコーディングで使っていて、愛着があります。

最近、Amiideさんがいいなと思った作品やアーティストはいますか?
1つだけですか?(笑)Cleo Sol(クレオ・ソル)という、UK R&Bの大好きなアーティストの最新アルバム『Gentlewomen』がすごく良かったです。
あと、Sasha Keableもめちゃ好きです。この方もUK R&Bアーティストで、彼女のEP『ACT Ⅱ』がめちゃくちゃ良くて。こないだSoulection(ソウレクション)のイベントに彼女が出演していて、生で観ることができて最高でした。
彼女もレズビアンであることを隠さず、UKで一人のアーティストとして活動しているんですが、日本とUKの違いを感じますね。こっちでは、どこにいても普通に存在していることがすごくいいなと思います。
いいですね。一昔前とは日本もだいぶ変わってきていると感じますが、まだまだ遅れていると感じることも多いです。ロンドンで活動するなかで、“日本人アーティスト”であることを意識することはありますか?
そうですね、日本にいるときは、たとえばCIRRRCLEのトリオで活動していたときは、一人がアメリカ人で、ある意味日本人であることを強みに感じる場面がありました。
でも、こっちに来てから感じる「日本人アーティストとしての強み」は、また少し違うんです。イギリスでは、アジア人と言うと、南アジア系の人(インドとかネパールなど)をイメージすることが多くて、東アジア系はまだ少数派。だからこそ、マイノリティであることが一つのニッチな強みがあると感じています。
イギリスの人たちは日本が好きな人も多いので、そういう意味では、日本人であること自体が一種のブランドのように感じられることもあります。
日本では当たり前だと思っていたことが、海外のリスナーには新鮮に受け取られることもあったりしますか?
イギリスのラジオ局BBC 1Xtraで、楽曲『Moving On』が“Track of the Week”にピックアップされたんです。この曲コラボレーターのROMderfulとSaïnaってアーティストと一緒に制作したもので、珍しく日本語と英語の両方で歌ってるんです。Saïnaは普段から日本語と英語を織り交ぜて歌っているアーティストで。
自分は普段、英語で歌っているので、「日本語と英語を織り交ぜた曲も聴いてもらえるんだ」と意外でした。むしろ「それがかっこいい」という受け取られ方をしたのが驚きで印象的でしたね。
逆に、ロンドンに暮らしてから日本のカルチャーの良さを再発見したことはありますか?
最近、英訳された日本の本をよく読んでいます。メインストリームの大きな書店でも、日本の作品が普通に沢山並んでいたりとか、多分流行っているのかな。奥さんが本好きなので買ってきた本を読んだりするんですけど、すごくいい本が多くて、日本の本っていいなと改めて思いましたね。
最後に、ファンのみなさん、これからAmiideさんの音楽に出会う人へメッセージをお願いします。
これまで聴いてくれている方が、コメントをくれたり、ストーリーに毎回リアクションしてくれたりするのは、ちゃんと見ています。本当にありがたいです。
これから聴いてくれる方には…一般的なR&Bには、セクシュアルな歌詞やトキシックなリレーションシップを歌ったものも多いけれど、自分はポジティブなものだったり、そういうステレオタイプとは違うR&Bをやっていると思うので、そういう音楽が好きな方には、ぜひ聴いてほしいですね。
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Photography by Laura Ribeiro
Interview & Text by Saori @saori8
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Amiide
Album 『Conversations』
2026.10.28
Digital Release
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Amiide
東京とロンドンを拠点に活動する⽇本⼈R&Bシンガーソングライター/プロデューサー。 LAの⼤学で映画を専攻後、⾳楽活動のため帰国。Hip-HopクルーCIRRRCLEでの活動を経て、ソロ活動を展開。 2018年の「Fast Car」がSpotifyグローバルプレイリスト「New Music Friday」に掲載。 2021年の「Better Miss Me」はBBC Radio 1Xtra「The Future Beats Show」で紹介され、2026年リリースの「Moving On ft. Saïna & ROMderful」は BBC Introducing「Track of The Week」にてイギリスの注⽬アーティストとして選出される。

